葛尾村　これからもよろしくね

安則 さん

自動車関連のエンジニアとして、ずっとまじめに仕事をしてきたんです。だから定年後は、自然が豊かな田舎でのんびりと暮らしたいと思っていて。どこにしようかと、いろいろ場所を見てまわったんですよ。箱根や軽井沢、房総あたりも。でも、どこもおもしろさを感じなかったんですよね。いわゆる別荘地よりも、整地からスタートするような場所のほうが、わたしには合っているなと思ったんです。そこでたどり着いたのが、この土地。ここは見晴らしもいいし、ある程度の広さもあるし、そばに竜子山が見える。「ここだ！」と思いましたね。

みどり さん

実は、わたしは移住に前向きではなかったんです。でも主人から、わたしの料理経験が活かせる喫茶店を開いてみないかと相談されて。それで、この家を建てるときに、1階を喫茶店として開けるように設計しました。特にこだわったのは、らせん状の階段。まさか、移住してすぐに震災がくるなんて思いもしなかったんですけどね。

安則 さん

数年間、仮設住宅での暮らしが続いたんですが、そこで地元の方々にはとてもよくしていただきました。家に、物置があるんですけどね。はじめはわたし一人でキットを組み立てようと思っていたんですよ。でも、知り合った村の方が仮設住宅から通いながら、組み立てを手伝ってくれて。ほかにも、田舎暮らしに必要なことを、いろいろと教えてくれたんです。

みどり さん

2016年にやっと、お店をオープンしたんですよ。仮設住宅にいたときにお世話になった方のなかには、今でもお客さんとして足を運んでくださる方もいます。

安則 さん

ここはあまり雪が降らないからっておすすめしてもらったけど、実際はそんなことなかったかな（笑）。たくさんは降らないけど、降る時は降るし、標高が高いから寒い。夏場は草刈りもあるしね。都会のように、いつでもなんでも揃う暮らしではないけど、インターネットがあれば必要なものは揃うし、海外旅行にも行ける。そこまで不便を感じたことはないです。

みどり さん

買い物は週に一度、2,30分ほど車で走った田村市まで出かけています。そこでも手に入らないものは、仙台へ行くことも。お料理に使う食材にはこだわりがありますから、妥協はしません。コロナ禍になってから、お店を予約制にしましてね。それまでは、毎日ばたばたと過ごす日もありましたけど、今は家でゆったりと過ごせる日が増えて、料理づくりを楽しんでいます。

安則 さん

この山々の風景を眺めているとね、やっぱり移住してよかったなと思うんですよ。この家から少し歩いた場所に、見晴らしのいい場所がありましてね。そこに東屋を建てたいなと計画しています。自然のなかで、こうやってゆったりと過ごせるのは長年の理想でした。 自分の気に入った土地で、自分好みの暮らしを築く。ぜひそんな経験を、若い人にもしてもらえたらなあと思います。

みどり さん

葛尾に興味を持たれた方は一度来てみてほしいですね。そしてうちのカフェにもぜひ。葛尾暮らしのアドバイスとか何でも聞いて欲しいです。とっておきのお茶と、お料理をご用意して待っていますよ。

安則 さん

わたしたちにも親切に接してくださったように、この村の方々は移住者のみなさんをあたたかく迎えてくれるはずです。自然に囲まれながら、ゆったりとした時間のなかで暮らしてみたいという方は、ぜひ葛尾村へ遊びにきてみてください。

［2022年1月取材］