移住歴約6ヶ月
東京都より移住
原 伸一朗 さん
未央 さん
未花 さん
葛尾村に来る前は、東京の世田谷区に住んでいた原さん一家。小学4年生の娘さんを連れて、3人家族で葛尾村へ移住されました。夫の伸一朗さん、妻の未央さんは、東京で30年ほど保育士として働いていたんだとか。移住を機に、仕事も暮らしも、新しい一歩を踏み出しています。住環境や教育環境など、あらゆる面で東京と大きく異なるこの村でのリアルなライフスタイルを教えてもらいました。
伸一朗 さん
息子が福島県相馬市で漁師になったことが、僕たちが葛尾村に移住した大きなきっかけです。実は、息子の話がネットニュースに載っていて。「相馬市 若者 漁師」と インターネットで検索してもらうと、見つかると思います(笑)。小学生の頃から福島へ釣りに通っていて、中学校を卒業したら「福島で漁師をしたい」と言っていました。高校進学せずに、社会人になること。僕たち夫婦もそれでいいのかどうか考えたけど、本人の意思を尊重しようと、送り出すことに決めたんです。
未央 さん
とはいえ、彼は16歳。まだまだ、大人としては未熟な面がたくさんあります。 そんな彼を親元から遠い場所で、親戚や保護者がいない環境で働かせるには親として不安がありました。でも息子は、社会人。人として、仕事人として、自立しなければなりません。 彼に干渉しないで、でも何かあればすぐに駆けつけられる距離にいたい。そんなことを思っていたときに見つけたのが、葛尾村でした。この村から、息子がいる相馬市までは、車で約1時間半。ちょうどいい場所だなって。
伸一朗 さん
それに、僕たちは中型・大型の犬を2匹飼っていて。もちとじろって言うんですけどね。犬を屋外で飼えるような、広々とした敷地がある家がいいなって。そしたら、村の移住相談窓口の方が、今住んでいるこの家を紹介してくださって。中古の空き家なんですが、水回り含めてきれいにリフォームされていて、娘を連れて家族3人で住むには理想的な物件でした。それに敷地も広く、外構も整備されていて安心して犬を遊ばせられる。見渡すかぎり、田んぼや山がひろがっていて、自然がとても気持ちいい。この住環境、すごくいいなと思う一方で、やはり都会から田舎に移り住む上でいくつか不安はあって。最初は、移住しようかどうか迷ったな。
未央 さん
私たち、東京にいた頃はいつでも、なんでも、すぐにものが手に入るような環境にいたからね。コンビニは家から歩いて1分。スーパーも、仕事帰りに立ち寄れる場所にあって。
伸一朗 さん
この村だと、コンビニまで車で20分。大型スーパーは30分かけて隣町へ行かないといけないし、病院もちょっと遠い。そんな不安ごとを、移住相談窓口の方に伝えた ら、いろいろと親身に相談にのってくださって。はじめは、がらっと住環境が変わることにハードルを感じていたけれど、その方の親身なサポートのおかげで不安なことは全部解消できて、移住しようと決めました。
未央 さん
移住相談窓口の方の人柄に惹かれたのも、大きなポイントだったかも。こんな人がいる村ならいいなって。このご縁を、大切にしたいと思いました。
未央 さん
2024年4月に引越して、今は6ヶ月目。春、夏をこの村で過ごしたけれど、ほんとうに気持ちがいいんです。家から職場まで、車で数分だけど毎日ドライブ気分(笑)。 風景を撮っては、SNS に投稿したりしています。
伸一朗 さん
妻は、移住する少し前に村内で仕事を見つけて、僕は移住前に富岡町でおもちゃの営業の仕事を見つけました。保育所など、子どもがいる施設を対象に、おもちゃのレンタルや販売の営業をしています。保育士を辞めても、子どもに関われる仕事ができればいいなと思っていたので、仕事探しの心配をすることなく移住できてよかったです。家から職場まで 40分くらいかかるけど、リモートワークもできるし、苦にはならないかな。
未央 さん
葛尾村に来てから、ストレスを感じることがほとんどないよね。ストレスが全くないわけではないけれど、東京にいる頃とはストレスの種類が違うというか。
伸一朗 さん
思っていた以上に快適だし、気持ちがおだやか。仕事を変えたことも影響しているだろうけど、張り詰めた感じがないね。正直、世帯年収は下がったけど、お金を無駄遣いすることもなくなったから、生活の苦労もないし。
未央 さん
前は、仕事帰りのついでにスーパーとかコンビニに寄って、毎日のようにお金を使っていたけど...。今は、週末にまとめて買い物に行くし、いい意味で無駄遣いをする機会が減ったから、家計がすっきりした気がする。それに、お隣さんが「野菜いらない?」 ってお裾分けをしてくれるから、特に夏は野菜を買う機会が減ったかも。
伸一朗 さん
家からカゴを持っていって、畑でカゴいっぱいに収穫させてもらうんだよね (笑)。娘の未花が喜ぶからって、スイカは3玉もらったっけ。あのスイカ、甘くてほんとにおいしかったなあ〜!
未央 さん
そういえば、畑の一部を使っていいよって言ってくれてたよ。東京の家でも、ちいさく家庭菜園をしたことはあったけど、畑で野菜を育てられるなんて!ゆくゆくは、私たちも畑をやりたいねと話していたので、こんなふうにご近所さんに良くしてもらえるのは、 すごく嬉しいです。
伸一朗 さん
いつかはトラクターにも乗ってみたいなあ。
未央 さん
葛尾って、子どものことを大切に想ってくれている地域だなと思うんです。未花が通っている葛尾小学校、児童数が少なくて同学年には未花ともう一人しかいないんだけど、人数が少ない分、先生が児童一人ひとりを丁寧にみてくれているなって。
伸一朗 さん
本人も、東京にいた時より学校に通うことに対して前向きだしね。放課後は学童に行ってるんですけど、仲のいい友だちとか、一緒に遊んだ人の学年や名前を聞くと、他学年だったり時には幼稚園に通う子どもだったりする。学年を越えて、いろんな人と一緒に学んだりあそべるのって、昔ながらの教育ですごくいいなって。
未央 さん
子どもどうしの繋がりだけじゃなくて、親どうしも関わりが深いよね。先日は、 未花と仲良くしてもらってるご家族から、「バーベキューしない?」と誘ってもらって。「葛尾に来てくれてありがとう」と言ってもらって、嬉しかったなあ。
伸一朗 さん
未花の性格を考えても、葛尾に来てよかったと思う。のびのびできて、前よりも自ら考えて行動できるようになったよね。地域の人たちも、心地よい距離感で、僕たち家族のことや、未花のことを見守ってくれるのもありがたい。地域に人たちに育ててもらってるなあ。
未央 さん
特に、自然の中で子育てしたいという人には、葛尾村はとってもいいかも。家から一歩出れば、すぐそばに田んぼや山があるし。村の人たちはフレンドリーだし。
伸一朗 さん
どんな形になるか分からないけれど、地域にひらいた子どもたちのあそび場をつくれたらと考えているんです。保育士の経験を生かして、この村で子育てをしている人たちのサポートができたらなって。
未央 さん
そこでつくり始めたのが、『月刊はらっち!』。わたしたち家族や夫婦のことを知らない村⺠の方もいらっしゃると思うので、まずは自己紹介も兼ねて、手づくりのおたよりを「葛尾村復興交流館あぜりあ」で置かせてもらうことにしました。
伸一朗 さん
主に子育て世代の方にむけたものなんですが、その他の方たちにも肩の力を抜いてもらうような内容にできればと思いながらつくっています。このおたよりには、僕たちのメールアドレスを掲載していて、匿名で相談ができるようにしているんです。
未央 さん
実際に、相談のメールをいただいたりもしてね。
伸一朗 さん
『月刊はらっち!』をきっかけに、誰かの力になれているとしたら、それはすごく嬉しいことだよね。
未央 さん
移住してまだ数ヵ月だけど、この村での暮らしや、今後がすごく楽しみだよね。 今の楽しみは、趣味のツーリングと、もうすぐ冬が来るから...家の薪ストーブのデビュー!
伸一朗 さん
あ、ご近所さんが譲ってくれるって言ってた薪棚を取りに行かなきゃ!
[2024年9月取材]